中小企業の後継者の方たちと関わらせて頂く機会がこれまで多くありました。その環境に身を置けたことが今も本当に有難く思っています。そんな環境で感じ、考えてきたことをお伝えしてみます。

大企業と中小のオーナー企業の社長交代は別物

大企業で育った私が知っていた「社長交代」と、中小のオーナー企業における「社長交代」は全く別物です。

大企業、上場企業では取締役会や株主の目があります。社長を選び、交代する圧力がかかります。大きな組織や仕組みが出来上がっているなかで、社長の交代が企業に及ぼす影響はある程度限定もされます。(大きな方針変更があった場合は別ですが)

一方で、中小のオーナー企業においては、経営を取り仕切るのが経営者のみであるケースが多く、方針も社長の意向に大きく左右されます。社員との関係性への影響も非常に大きいです。そして一番大きな違いは、外圧がほぼないために、「いつ交代するか」「誰を選ぶか」ということについては社長の一存で決まるということです。
実際に、80歳近くなっても経営者を交代せず、そのあともはっきりさせない方もいらっしゃいました。そうなると、後継者の候補となる方たちは、肚も決まらず、自分のモチベーションも維持が難しくなります。そもそも後継者を計画的に育てられていないケースも多く、オーナー企業で特に創業者の場合はその傾向が顕著です。自分のやり方でここまで会社をやってきたこと、そのエネルギーが、事業承継という場面においては難しく作用しがちです。ちなみに、2代目社長はその苦労を知るがゆえに、2代目から3代目の承継は良く考えておられる傾向があります。

いくら事業を盛り立ててきた経営者でも、自分が「事業承継」をする経験は基本的にお持ちではありません。ほとんどの方にとって「初めて」で「1度きり」です。だから早めから知ること、早めから準備するかがその成否を分けます。
そういうことをどの経営者の方も一度は聞かれたことがあるでしょうが、事業承継には、経営者の仕事のエンディングを考えるというイメージが付きまとうこと、今日明日の喫緊の課題ではないことから、どうしても後回し後回しになるのが常なのでしょう。

早めに取り組んだ経営者が手にするもの

そのような事業承継の課題に、それでもきちんと向き合い取り組む経営者の方ももちろんいらっしゃいます。

後継者を育成し、後継者と一緒に未来を考え、計画的にバトンタッチする。
後継者は血縁の方もいれば、最近は内部昇格者も多いです(実際に統計によれば今は内部昇格の数が上回ります)。

  • 大事なのは経営者としての「教育」を行っていること。外部の研修に出したり、自ら経営の視点を教えたりされる丁寧なプロセスを踏まれています。
  • そして一緒に経営を見て未来を考える時間をつくっていること。自身の考えを伝え後継者を育成するだけでなく、後継者が持つ新しい視点や考え方を今から活かせる効果もあります。
  • 後継者だけでなく、それを支える人材を一緒に育てること。次世代を担うメンバーを一緒に育てることで、組織も若返り、後継者も自分の考えを実行しやすくなります。

いかがでしょうか。事業承継を早めから準備していく上記のプロセスは、後継者を含む若いメンバーを育て、新しい視点を経営に取り入れ、時代に合わせたアップデートを今から可能にすることでもあるのです。経営自体が今から改善するという大きな副次効果を生み、そしてそのような企業は風通しも良く人も集まりやすい。それを現役経営者として手に入れることができます。

オーナー企業の事業承継では、後継者が30代や40代など、一気に若返ることが多いです。大企業では、経営者の若返りは課題になりつつなかなか実現できていないことですが、それが変化する事業環境に対応して成長する小さな船(中小企業)に備わった新陳代謝の仕組みであるとも感じます。

人を育て、会社を育てながら、経営者人生の総仕上げとして後半戦に取り組むことは、未来を次世代と作るワクワクしたプロセスであるはず。世代を超えた成長を見据えて、ぜひ早めから取り組んでみませんか。