リーダー人材の育成において心掛けていることがあります。
それは、仕事の「意味」や「背景」を伝えることです。

中小企業において、人の資産としての価値はとても高いはず。
限られた人数だからこそ、一人ひとりの考え方や動き方の掛け算が、そのまま会社の成果と直結します。

そのせいでしょうか。よくある経営者のお悩みには「うちの社員の意識が低い」「意識が低いから、自分が求めている行動ができない」ということが多いように思います。

「意味」と「意識」

人材育成や組織づくりにおいて、「意味」と「意識」が大事だと言われます。

後者の「意識」は、その人のなかに存在する、ものごとに対する姿勢や心構えを指します。心に存在し、行動や態度に現れるものです。
実際の行動に現れるので、自社の社員には「意識が高い」人になってほしい、そういう人を育てたいと思うのは当然のことです。

では「意味」とはなにか。
「意味」とは、その物事に対する目的や理由、なぜやるのかという問いへの答え、つまり”Why”にあたることです。
論理によって納得する、繋がりを理解するというようなことが、「意味がわかる・理解する」ということであり、頭で考えることで、行動の動機を生むものです。


そして、実は「意味」を理解することなしに、「意識」は高まらないと言われています。

ものごとを認識して、その目的や理由を理解・納得して、「腑に落ちる」からこそ、自発的な姿勢が生まれ、人はあるべき方向へ行動するようになります。
「意識」が大事であることは間違いありませんが、その良い方向性の「意識」を生むためにも、「意味」を理解することが前提として必須だ、ということなのです。


「意味」と「意識」の構造をこのように理解してみると、「意識」ばかり変えようとしてもうまく行かない理由が分かります。

範囲を広げ、視座を高めて、仕事の「意味」を伝える

さて、仕事でさまざまな作業を教えるときに、「意味」を伝えることは良く行われています。

例えばこんな具合です。

このネジを締めるときは、一旦仮止めで緩く締めてから、最後に仕上げとして固く締めるてください。
なぜなら、全体を組み上げてからでないと、全体のバランスが整合しないからです。

書類ファイルを共有フォルダに格納するときは、この命名ルールで格納してください。
なぜなら、一定のルールで格納したほうが、整理もできるし、探す手間が省けるからです。

人は、ただ「この作業をしてください」と言われるより、「なぜか」「なんのために」を理解できたほうが意欲が湧きますし、「理由」が分かっていると、イレギュラーなケースへの対応や一工夫もできるようになります。
現場でちゃんと指導できる人は、こうやって一言、意味を伝えることまでやっています。


一方で、その人の「仕事」の「意味」については、どこまで伝えられているでしょうか。

その人が行っている「仕事」にはいくつかの意味の段階があります。

  • 仕事における一つ一つの「作業」の意味
  • その部署における「あなたが担当している仕事」の意味
  • 会社の商品づくりやサービス提供における「自部署の仕事」の意味
  • 経営全体や事業成果における「自部署の仕事」の意味
  • お客さまにとっての「自社の仕事」の意味
  • 社会にとっての「自社の仕事」の意味
  • 自分自身にとっての「自分の仕事」の意味

「仕事の意味」は、その範囲をどこまで広げるか、視座をどこまで高くするかで大きく変わります。

高い段階の「仕事の意味」を理解するには、ときに理解するための知識やインプット必要も必要になります。ちょっと一言、で済まない場合がほとんどです。
例えば、ほかの部署の仕事を知り、その繋がりを理解することや、お客さまのニーズや様子を知ること、マーケティングの考え方や経営や財務の基礎的な知識、自分のキャリアへの理解、そういったことをセットにして「仕事の意味」を伝える、自分で考える、というプロセスのようなことです。

なかなか簡単なことではありませんし、手間もかかります。
それでも、実際にリーダー育成の場などで、こうやって「仕事の意味」について高い段階で腑に落ちていただけるようにすると、その「意識」が大きく変わり、行動に繋がっていく姿をを目の当たりにします。

社員やリーダー教育の場で、専門知識だけでなく、「仕事の意味」を教えること。
「意識」を変えたいなら、まず「意味」を伝えることから始めること。
これができる企業は、「人」が強くなります。

手間をかけた以上に、その成果は大きい。
人が大事な中小企業だからこそ、取り組んで頂きたいと思います。